温泉でのネガティブ体験、教えてください。
題)あなたが経験した、温浴施設でのネガティブな体験を教えてください。
起)各地の温泉に足繁く通っていると、いろいろな出来事に遭遇します。それは、めったに経験できないようなありがたく貴重な体験の場合もありますが、その真逆でとってもネガティブな体験内容であることもございます。
承)自分のお気に入りの温浴施設で、うんざりすることがあったり、多大なストレスを感じる体験をしたり、腹立たしい事柄を経験したり、という憂き目に遭われた方もいらっしゃると思います。これらの内容が、施設側に原因がある場合には、反省と改善を促す意味でその施設のために口コミ欄等へその内容を投稿するのもアリだと思います。しかし、温浴施設の利用客による公衆モラル・公共マナーの欠落に由来する理不尽もしくは不条理な行為・言動・振る舞いによるネガティブな体験には、施設側は直接の管理責任はありません。また、自らの状況判断の不備などによって施設で不自由な思いをした経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。それらを施設情報の口コミに書き込むのには、抵抗を感じるのです。
転)でも、温泉をこよなく愛好する方々にとって、これから遭遇するかもしれないネガティブ事例を事前に知っておくということは、それらを体験する前に免疫を作ることができるという意味で有益なことなのではないかと思います。知らない他人の言動に対して注意したりすると、危害を加えられる恐れがあるのが現代の世相です。温泉を楽しむことを趣味とされている方々が、今後も時間とお金と情熱を注ぎ続けることができる対象としてあって欲しいと、温泉と温浴施設に対して思うのです。
結)国が新湯治プロジェクトの推進というものを打ち出して、国民の健康管理と療養養生に温泉を活用することで、社会保障費の抑制を図る施策を検討しています。また、TVの旅行紀行番組も、温泉をテーマにした番組が数多く見受けられるようになりました。今後益々増加していくでしょう。外国人旅行客によるインパウンド需要としての温泉も加わって、これらにより、新たな温泉ブームが到来する予感がします。それは、銭湯にも行ったことがなく、大人数で風呂に入るのは修学旅行で海水パンツを付けて入っただけ、という人たちが、温泉地に押し寄せてくるということになるのかもしれません。温泉を楽しむための自衛が、個々に求められるという時代が到来するのかもしれません。
このサイトを閲覧する皆さまにとって、他山の石(他人の誤った行いや言葉も、自分の行いの参考になる)としてご活用いただきたいと思われるエピソードの投稿を、よろしくお願いいたします。
1: 洗って流さぬ親子連れ
洗って流さぬ親子連れ
場所は、福島の幕川温泉でのことだ。
ここは、白濁の硫化水素系硫黄泉で有名な温泉地だ。
土湯峠温泉郷の最深部にあたり、冬季は休業する。
相当に前の話になる。
休日の昼下がり、男女別の内風呂大浴場でまったりしていたら、
親子連れが2名で入ってきた。
「思ったより大きいなぁ。」
内風呂のことと思われる男親のセリフだった。
掛け湯もなく、まえとうしろを洗うこともなく、
二人とも飛び込むように内風呂に入った。
しっぱねがこちらの顔にかかった。
男親は30前後、こどもは6歳ぐらい。
「タオルはお湯に入れるなよ。においが取れなくなるから。」
女親の指導だろう。
そのうち、子供が湯船の中で縄跳びジャンプを始めた。
そのころはやっていたキョンシーの真似だったろうか。
こちらのそばに寄ってきて、またしっぱねがかかった。
男親の様子を見ると、湯船の中で鼻毛を抜いていた。
イライラが高まってきたので、風呂から上がり、
洗い場で持参した風呂グッツを使って身体を洗った。
ジレット髭剃りをあてていると、親子連れが洗い場を使いだした。
となりで大声出されてうるさいので、
さっさとシャワーで流して、風呂に戻った。
5分ほどしたら、「よーし、いくぞ」という男親の声がした。
見ると、二人とも頭も体も白い泡だらけで、
そのまま走ってきてお湯に飛び込んできた。
「白いお湯だと、もともと白いからこれができるんだ。気持ちいいだろ?」
子供に対する男親のセリフだった。
馬飛びの恰好で、尻から飛び込んできたため、その余波を頭からかぶった。
「こらぁ、いいかげんにしろ~~」とやろうかと思ったのだが、
これらがわしに対する挑発のような気がし出して、
うかつに乗るのも警戒信号を感じて、黙って脱衣所に引き上げた。
こういうシグナルは、結構当たるのだ。
了
2: 平成30年1月末 鳴子農民の家での出来事
平成30年1月末 鳴子農民の家での出来事
この報告は、書こうか書くまいか、ずいぶん逡巡したのだが、
思い切って公表することにした。
場所は鳴子温泉、農民の家での出来事だ。
農民の家は、平成30年2月末で破産手続きに入った全国で唯一の温泉農協だった。
この年の1月末に、1泊した時のことだ。
当日は、普段通りの通常営業と思える様子だった。
フロントの女性スタッフもにこやかで、一か月後の幕引きを予感させるものは
館内には何もなかった。
硫黄泉と名付けられた浴場があった。
湯温は43~44℃で、黄色がかった硫化水素系硫黄泉だった。
風の通りがとてもよく、1月の鳴子の冷気が浴室内をこれでもかと冷やしていた。
風に吹かれると、顔が痛い。濡れた髪の毛が凍りそうだ。
おかげで、この湯温でもかなりの長湯を楽しめた。
70代ぐらいの3人が、風呂談義をしていた。
「このあいだ、ここで90過ぎのじぃさまが二人で話していたが、布袋さまのように腹のつき出たやつは85までは生きられないんだそうだ。」
「ここに来たら、この風呂にだけ入ることにしている。体を動かす前にこれに入ると、あとで筋肉痛が起きない。他の風呂は効き目がない。」
「女の人が10人もまとめて入ってくると、黄色いお湯が白くなる。あれはなんでだろ?」
なんとか聞き取れて覚えているのはこのくらいだ。
そのうち、二人が上がっていき、残った一人が半身浴をしていたわしに
「あんた、風呂好きかい?」と近寄ってきた。
以下、過程と経過は大幅に端折って、結論を書く。
その老人は温泉農協役員のMと名乗った。
そして、わしを相手に温泉農協組合員への勧誘を始めた。
150万円の出資を求めてきたのだ。
「今は、福島の人でも、農業所得がなくても出資できるようになった。」
「150万円以上出資すれば、毎年12%分の施設利用券がもらえる。」
「自分は500万円出資している。毎年、70泊以上ここにタダで泊っている。」
「出資金は100%返還が法律で保証されている。」
「自分は50歳の時に大病をした。60までは生きられないと医者に言われていた。今年75だが、ここの温泉のおかげでピンピンしている。そういう人がここには何千人もいる。」
「自らの未来のために、たくさんの人たちが毎日のように新しく加入している。自分の講も300人を超えた。」
「瓶行に預金するより、100倍利息が付く。温泉が好きなら、入るしかないでしょ。」
『子供の学費があと2年あるので、その後のことだ』 と断りを入れたら、
「出資は50万でも、30万でも、役員の自分を通せば加入できるし、講にも入れる。」
と食い下がってきた。
講とは何か? とは、あえて訊ねなかった。
それが老人Mの切り札なのがみえみえだったからだ。
おそらくは、この話がインチキだとしたら、
これまでの説明に出てこなかったファクトとして、
施設利用券以外の配当受け渡しに絡むもの、
それが講なのだろうと見当を付けた。
Mが自分から講の説明を始めた時、
『硫黄泉に入りすぎた。めまいがするから、部屋で休む。この件は自分にはまだ早い。いづれ検討するから、縁があればその時にでもまた。』
と言い捨てて、さっさとお湯から上がった。
Mは追いかけては来なかった。
その後は、低温炭酸泉と白濁硫黄泉の交互浴室にだけ入っていたためか、
館内でMと会うことはなかった。
実は、翌日のチェックアウトの時にひと悶着あったのだが、それは割愛する。
その1か月後、農民の家の破産手続き開始をニュースで知ることになる。
Mは、1か月後に破産することを知っていながら、
温泉農協への勧誘をしていたのだろうか。
実直な稲作兼業農家のアグリワーカーを絵にかいたような感じのMが、
破産した農民の家に係る架空出資勧誘の件にからんで逮捕されたというニュースは、
今のところ確認していない。
自らの既知の人物が関わってこないと、
ああいうお話で他人を本気にさせるのはムリなのかもしれないと、
あとになって思った。
了
3: 深夜のズコズコ男
深夜のズコズコ男
30年以上前の話になる。
季節は夏。それは、プロ野球のオールスターゲームで、
ヤクルトスワローズの荒木大輔が初登板して好投した夜だった。
荒木の後に二番手で投げた同じヤクルトの尾花がメタメタに打たれた。
その年の秋、尾花は現役を引退した。
地元の地方銀行の慰安旅行が福島の土湯温泉のとある宿で開催された。
宴会後、飲みすぎて寝入ってしまい、起きたのは03時過ぎだった。
大量の寝汗をかいたので、風呂へ行くことにした。
風呂は男女別の大浴場と、それらをつなぐ通路には混浴の露天風呂があった。
露天風呂からは、男湯も女湯も様子を眺めることができた。
時間が時間なだけに、どの風呂にもだれも入ってはいなかった。
男湯は岩をセメントでつなぎあわせ固めたような大風呂であった。
寝湯のように平たい岩の上で横になってうとうとしていたら、
「入っている人、だれかいますかぁ?」という男の声がした。
眠かったので、応えずにスルーしていると、
「だれもいませんね、はいわかりましたぁ~」という声が聞こえた。
その後、裸の男が視界に現れ、備品のシャンプー・リンスの容器を集めだした。
村田英雄の古い歌に人生劇場というのがある。
「や~ると思え~ば、どこまでぇやるさ~」で始まる歌だ。
その男は、この歌のメロディで
「ずこず~こ ずこず~~こ・・・」とうたいながら容器を集め、
ポンプノズルをはずし、横一線に並べると、
容器の口めがけて放尿を始めたのだ。
現実とは思えなかったのだが、上体を起こし、
湯船の中で仁王立ちになって 「こらぁ~~~」と吠えた。
裸の男は、飛び上がり、ひざから洗い場のタイルに落ちた。
その後、そんきょの態勢で容器にポンプノズルを戻し、
洗い場の鏡の前に設置して、
「失礼しましたぁ~」言い残して脱衣所へ走って逃げて行った。
ドリフターズの仲本工事を小太りにしたような男だった。
なぜか、そのあとを追った。
それほどタイムラグはなかったはずだが、男はもういなかった。
亭主の使う育毛剤の容器に、
ムダ毛処理の除毛液を入れる嫁の話は聞いたことがあった。
しかし、温泉でこういういたずらをするオトナがいるとは、
想像したこともなかった。
それ以降、シャンプー・リンス・ボディソープ・ナイロンタオル・馬毛ブラシ・ジレット髭剃りを風呂グッツとして、温浴施設に持参することにしている。
おかげさまで、その習慣を30年以上続けている。
了
4: 湯船の中で・・・
湯船の中で・・・
温泉○○…という本がある。年2回の発行で、
良いものも悪いものもえり好みせずに情報提供していくという、
誠に好ましい編集方針をとっている温泉雑誌だ。
2年前にこの本を知り、購入するようになった。
時々、掲載温浴施設の無料券や半額券が付いてくる。
残念ながら西高東低気質の本であるため、
東北在住者にはこのクーポンはなかなかに使いづらいものがある。
昨年、那須塩原のある宿に泊まったとき、
浴室そばの湯上り休憩所に、この本のバックナンバーが揃って置いてあった。
興味深く読ませていただいた。
その中で、職業として温泉に関わっている人たちの覆面座談会の記録が、
とても気になる内容だった。
それは、一言で言えば、「湯船の中で大小便をする人たち」というものだった。
目次に載っているタイトルは別ものだったが、記事の中身はそれだった。
以下、その内容をかいつまんで紹介する。
① ある女性温泉ライターは、
幼少のころ温泉地の温浴施設に入浴中に尿意をもよおし、
その事を母親に伝えると、「この中でしなさい」と指導されたそうだ。
その話をある温泉地で地元の観光協会の人にしたところ、
「大小便は浴室内の排水溝にして、
お湯を汲んで流すのが入浴客にとって当たり前だった。」
「老人の中には間に合わずに湯船の中で便を出すことも多々あった。
そういうときのために、便をすくう網が浴室内に用意されていた。
その処理作業は、入浴者が自発的に行っていた。」
という話を聞かされたという。
② 温泉病院に勤務する内科医は、
排尿困難者は入浴中に湯船の中で尿をすることが多いという。
楽に出るからというのがその理由だ。
「排尿に苦痛を感じる人には、入浴時に湯船の中で小用をすることに
快楽をおぼえる人もいるのだと思う。」と述べている。
③ 湯温が36℃というぬるい温泉浴槽を持つ宿の主人は、
「着替えてちゃんとトイレで小用をするのは二人に一人で、
残りの半分はシャワーを浴びながら洗い場で用を足す。
それ以外は湯船の中に出している。
土日祝の混雑時に浴槽の様子を見に行くと、
お湯の色が変色しているのでよくわかる。」
「ペットボトルで給水補給しながら2~3時間入浴していれば、
尿意がくるのは当たり前。そのあいだずっとお湯に入り続けている人は、
お湯の中で用を足している。」と述べている。
これらのすべてが事実だというのではないかもしれない。
覆面記事なのでライターの脚色もあるのかもしれない。
しかし、ぬるい浴槽内での入浴客の小用と、風呂の中での老人の脱糞は、
自分も何度かその現場や痕跡に遭遇しているファクトなのだ。
このあたりの事が、レジオネラ菌感染事件の陰に隠れた、
根拠として表に出ることのない、温泉水の塩素殺菌の必要性と、
保健所や行政はとらえているのかもしれない。
了
5: 飯坂温泉盛衰記
飯坂温泉盛衰記
これは福島の飯坂温泉のお話。
無色透明・無味無臭の弱アルカリ性単純温泉がほとんどの温泉地だ。
江戸時代にたくさん書かれた温泉番付の中には、
東の最高位である大関の称号を飯坂温泉が受けているものもある。
少し離れた穴原・天王寺も含めると、計9つの共同浴場がある。
飯坂温泉駅近くの波来湯の大きいほうの浴槽以外は、すべてアチチの湯だ。
かつては、入浴客に勝手に加水をさせないお湯番と称するの老人が
交代で見張りをしていた。
熱くて入れない入浴客が、備え付けのホースで加水しようとすると、
「(水で薄まると)お湯が効かなくなる」
「(湯温が下がると)バイ菌が増える」
「ここは昔から熱い湯に入る場所だ。ぬるい風呂は家で入れ」
この3点セットを振りかざして妨害した。
地元飯坂温泉の、廃れ行く伝統文化・流儀様式を自分たちが守り、
次世代に継承しようという、意義と任務を自覚した老人たちだったのだろう、
とは思う。
しかし、熱くて自分たちですら入れないような熱湯風呂を
かたくなに守ろうとする老人の姿は、いやがらせにしか見えなかったものだ。
ある時、加水しようとした観光客がどこかの共同浴場でこのお湯番とやりあい、
激しい口論になり、その顛末を新聞の読者欄に 『いかがなものか』
と投稿したのだそうだ。地元の放送局が連日特集を組んでこのテーマをとりあげ、
飯坂共同湯の現状報告をローカルニュースでバンバンと流したのだという。
結論として、老人たちの言動は、悪しき風習として、
やめることになっていったという。
近隣の土湯温泉の共同浴場にもヌシとオサという二人の老人が、
飯坂と同じようにお湯番をしていたが、
この件の後、自然といなくなったと聞く。
昭和元禄華やかなりし頃には、飯坂温泉は旅館数が150を数えたという。
1、専業農家の塩抜き湯治の需要がたくさんあって、
2、東北唯一の中央競馬を、期間中何週間も温泉に泊まり楽しむお大尽も結構いて、
3、東京をはじめ各地から出張に来るビジネスパースンの宿泊地として、
4、法人や各種任意団体の集団宴会旅行の受け皿として、
その当時はむちゃくちゃ賑わったのだという。
従事する職種は様々だったろうが、夜に働く婦人ワーカーは、
1,000人を軽く超えていたという。
時代は平成に入り、バブル経済期が終焉し、
飯坂の温泉旅館は苦境の時代に入った。
1、専業農家の湯治常連客はその多くが彼岸へと旅立ち、
そこに農業後継者がいる場合でも、農閑期のない兼業農家の道を選ぶようになった。
よって、農閑期に温泉湯治をするアグリワーカーがいなくなった。
2、競馬をたしなむ平成のお大尽は、競馬場に足を運ばなくなった。
自宅の空調快適な部屋で、100インチのモニタービジョンで
グリーンチャンネルの映像を見ながら、モバイル端末で勝馬投票をしている。
3、高速交通網の整備に伴い、首都圏からの福島出張は日帰りが当たり前になった。
東北新幹線の上野・東京駅発着開始と東北自動車道の首都高速道への乗り入れが
この変革をもたらした。県庁所在地福島市のお膝元である飯坂温泉で、
平日に連日100室以上の客室を稼働させていた官公庁需要が、
官官接待批判も相まってものの見事に消失した。
4、失われたうん十年といわれる長引く不況の影響で、
あれほど盛んに行われていた、企業や各種団体の、
貸し切りバスを連ねた集団宴会温泉旅行の需要もほとんどなくなった。
この需要の回復が望めないと見極めをつけた段階で、夜に働く婦人ワーカー達は、
その統括組織ごと新潟の月岡温泉に移動していった。
顧客4本柱をことごとく失った飯坂の温泉旅館は、
その多くがやがて固定資産税を納められなくなり、
差し押さえを受けて倒産していった。
歴代天皇が行幸の際に宿泊したという伝統古刹旅館も例外ではなかった。
現在営業しているのは、家族経営の小規模旅館と、
外部資本の大型旅館とに2極分化している。
JR福島駅で、福島電気鉄道飯坂線に乗り込む。
終点の飯坂温泉駅までいく。
駅を出ると十綱橋が摺上川に架けられているのが見える。
夕暮れに、この橋の上に立ち、
川の両岸に立ち並ぶ温泉旅館の残骸を眺めるとき、
グーフィはしゃべれるのに、
プルートがしゃべれないのは
なぜなんだろうか
といった疑問が、ふと浮かんできたりするのだ。
了
6: お風呂の愉しみは老人のものか?
お風呂の愉しみは老人のものか?
2年前の初夏の事だ。
子供の学校の行事で、その日休みを取っていた女子事務員が、
始業時間を少し過ぎたころ、私服で会社の事務室に入ってきた。
担任の都合で、朝からの行事予定が午後になったのだという。
---3時間も空いちゃった。家には戻りたくないし、何してようかな---
と、女子事務員がいうので、近くの温浴施設の名を挙げて、
ゆっくりしてきたらいいんじゃない と答えたところ、
---あたしをいくつだと思ってるんですか。そんな年じゃ、ありません!!---
と、目玉を三角にして怒られたのだ。
この話が会社の管理部に伝わって、
セクハラ委員会の査問にかけられそうになったのだ。
幸い、わしの風呂仲間が管理部にいて、擁護してくれたので、
お咎めを受けることはなかった。
しかし、その女子事務員は業務の連絡事項以外は、
それ以降、わしと口をきいてくれなくなった。
料理レシピや飼犬のことなんかをよく話していたんだけどなぁ。。
風呂や温泉は、年寄りのたしなみ ・・・
これが一般的な、世の中の常識なのだろうか。
10代後半から、自分で温泉歩きをして、お湯あそびを続けてきたわしは、
非常識者のレッテルを貼られる対象なのだろうか。
東京出張の折に、時間を作って東京ドームのラクーアへ行くと、
平日の午後なのに、20代~40代の入浴客がたくさんいる。
全体の8割以上だ。この1年で4回ほどその時間帯に行っているが、
毎回そんな感じだ。
都市部と地方とでは、レクリエーションとしての温泉の捉え方が
違っているのかもしれない。
了
7: ぬるい温泉での声高な長話
ぬるい温泉での声高な長話
摂氏30℃から37℃くらいの温度帯の温泉に、
長時間身を浸す愉しみを覚えて以来、
暑い夏場の温泉歩きが四季を通して一番の楽しみになった。
寒い冬が本来の温泉シーズンなのだろうが、
雪の山道を車で走る億劫さや、宿泊施設にかかわるさまざまな寒さ、等を理由に、
年々12月~3月の温泉行が減少している。
ついに今年は、このままでは0件になりそうな状況だ。
ぬるめの温泉歩きを始めて気になったことは、
2~3人の小グループが、自分たち以外には関係ないことを、
ぬるい浴槽の中で声高に長時間に渡ってしゃべり続けていることだ。
30分、1時間、2時間と、そのグループが風呂に入っている間、
延々としゃべり続ける。浴場が1つしかない施設でこういうグループと遭遇すると、
わが身の不幸を嘆かわしく思うことになる。
他にすることもないから、湯に浸かっている間は、
仲間内のコミュニケーションを深めることに努めている というのが、
大きな声でしゃべり続ける側の論理として主張する行為の正当性なのだろう。
でも、聞かされる側はたまらない。
おたくたちはここの客だろうが、こっちも客なのだ。
嫌なものが見えるときは、視線を逸らすか、目をつぶればいい。
嫌な臭いがするときは、口で呼吸すればいい。
しかし、嫌な音が聞こえるときは、フェイスアクションだけでは防御対応ができない。
両手の人差し指を両耳に差し込むか、耳栓を使用するかしないと、
音に関しては対処できない。
午前に2湯、午後にも2湯のペースで廻る湯めぐりツアーで訪問の場合、
そのグループがお湯から上がるのを別室で待っている時間的ゆとりはない。
そんな時はさっさと切り上げて、次に向かうことになる。
楽しみにしていた風呂であればあるほど、不満が強く残ることになる。
過去に5つほどの撤収事例がある。再訪の難しい遠方の湯であることが多い。
浴場内でのマナーやルールは、温浴施設の公共性の尊重と、
利用者の協調性の遵守によって、長い時間をかけて形作られてきた、
ニッポン人の行動模範様式なのだと思う。
それ以前に、お湯を使わせていただくという謙虚さを、
利用者が温泉に対して持つことが大事なのだろう、という気がする。
了
8: 浴室転倒
浴室転倒
40を過ぎたあたりから、温浴施設の浴室内で転倒し、意識不明になるという、
キケンな状態を経験するようになった。
夜、電気を消して寝具に潜り込み、目をつぶるとすっと眠りに落ちる。
同じ状況が、湯上りに歩いているときや体をふいているときに起きるのだ。
すっと意識がなくなる。
鍵泥棒のメソッドという映画に、
香川照之という俳優が、銭湯で転倒して頭を打って、
記憶喪失になる場面がある。あれは石鹸を踏んで転倒するのだが、
わしの場合は小道具を使わない。
今後のための傾向と対策を立てるため、過去の事例を書き出してみた。
ちなみに、すべてあおむけに倒れて、後頭部を打撲している。
いずれの場合も、医療機関の治療にはかかっていない。
場所)、時期)、状況)、その他)
1、東京・神楽坂の銭湯:小島よしおの最盛期:薬湯から洗い場への移動中に意識がなくなり転倒:意識不明時間約30秒:睡眠不足・空腹
2、福島・大玉温泉:震災前H20ごろか:湯上りに脱衣所でバスタオル使用中に意識がなくなり転倒:意識不明時間約5分:空腹
3、宮城・東鳴子温泉:H26ごろ:湯上りに脱衣所へ向かう途中にめまいを感じ、しゃがみ込むが、そのまま後ろにころがり意識不明:約20分:深夜
※夏で助かった。冬だと、体温低下で危険なところだった。
4、福島・会津スーパー銭湯:H28年1月:薬湯から水風呂へ移動中に転倒:約1分:空腹・睡眠不足:薬湯表示のプラ板で左手の手首から肘まで裂傷
震災時に南相馬市の仮設住宅設営を手伝った際に熱中症になり、それ以降、
熱い風呂に限界まで入り続けて温浴ハイ状態を楽しむという遊びができなくなった。
限度を少しでも超えると、
熱中症の時の、あの気持ち悪さが数倍になって襲ってくるのだ。
内臓がひねられてえぐられるような感覚だ。
現在では、コツを覚えて、限度の範囲内でアチチの湯にも入れるようになった。
しかし、これがあぶない と、予感がささやく。
危険な要素は、高温泉・薬湯・湯上り・空腹時・睡眠不足といったところか。
原因は、血圧低下・低血糖・貧血・脳血栓 などが候補にあがるな。
会津では、わずか5歩先の水風呂にたどり着けなかった。
最近は、湯上りの際に、めまい確認をしてから、移動開始するようにしている。
昨年は、舞浜ユーラシアの黄金の湯で座り込みセーフの事例があった。
ぬるいお湯では、めまいも卒倒も転倒も、そのきざしすら感じたことがない。
もう一度、痛い目をみたら、わしはぬる専の道を歩むようになるのだろうか。
了
9: 「ホンモノの温泉の見分け方」に関わるデマ
テレビや雑誌に温泉情報がテーマになっているときは、
できるだけ内容を確認するようにしている。
自分の趣味に関することで、知らずにいることを知りたいと思うからだ。
最近の温泉特集のトレンドの中に、ホンモノの温泉とは
というのもちらほらと見受けられる。長野の温泉偽装以来、脈々と続いているテーマだ。
『温泉に行くなら、ホンモノの温泉に行きましょう』ということで、
それ自体は、いいことなのだろうとは思う。
ただ、放送番組や雑誌記事の内容をよく確認すると、なんじゃこりゃあ・・・
と思わされるものに出くわすこともある。
ホンモノの温泉とは・・・ここがホンモノという、温泉施設の実例を挙げる。
それじゃあ、ニセモノの温泉とは、となったときに、
コメンテーターやシナリオライターの思い込みによる、
誤ったデマ情報が出てくることになる。
ここ数年間で、気になったことをいくつか挙げておきたい。
これも、ネガティブな温泉体験のひとつだと思っている。
「ホンモノの温泉」にまつわる、誤った見方・指摘について
① ここの宿の風呂は無色だから、ニセモノ温泉の可能性が高い。
→国内のほとんどの温泉は無色。
硫化水素系硫黄泉は白、含鉄泉は茶褐色など、泉質によって色は決まる。
② 風呂のお湯から塩素臭がする施設は、100%水道水を温泉水と偽っている。
→今はレジオネラ菌対策として、かけ流し温泉ですら塩素投入を義務付けている県がある。
③ 「ボイラー室」がある施設は温泉ではないと思って間違いない。
→熱いシャワーを浴びるためには何が必要か?
「ボイラー室」がない宿はほとんどないと言ってよい。
④ モーター(ポンプ)の音がするところは温泉ではないから要注意。
→上層階にお湯や水をポンプアップするにはモーターが必要。
⑤ チェックインしたらまず貯湯タンクを探せ。あればニセモノ温泉。
→貯湯タンクがない宿は、どのようにして入浴適温のお湯を安定供給するの?
⑥ 浴場が地下や一階でなく、階上にあるところは温泉ではない。
→温泉をポンプアップすると偽物温泉になるの?
⑦「タオルを浴槽につけないでください」と表示しているのはかけ流しではない。
→これは、公衆浴場・温泉旅館に共通する入浴マナー。
⑧「飲用不可」と表示してあるのは100%循環。
→飲泉については、温泉の効能成分として認められていながら、
保健所が飲用を許可していないため「飲用不可」の場合がほとんど。
循環湯で不衛生だから飲めないというわけではない。
⑨ 入湯料が150円の施設は全て経営上苦しいだろうから循環の筈。
→意味不明。むしろ入湯税をとっていなければ温泉ではないはず。
ただし、150円か70円かということならば、その判断基準がわしには分からない。
鳴子のある宿は、1泊して食事つきは150円、自炊は70円だし、
その隣の宿は、一律1泊150円だ。
施設が自由に決められるのだろうか。
誤った情報は、いつかどこかで誰かが指摘修正しなければいけないのだろうな。
情報の送り手は、だれもそんなこと覚えちゃいないよ ということなんだろうけどね。
甘露寺、松田、郡司、飯沼、八岩 といったメンバーで、
温泉テーマの座談会をやってテレビ放映してもらいたいな。
全国キー局だと、テレビ東京だけかな。期待できるのは。
了